石膏は意外に身近なところで活躍しています。日々の生活やさまざまな産業を陰ながら支えています。
石膏像などの美術造形や、陶磁器を製造する際の型材として使われるほか、建築物の室内装飾や金属・ガラスの鋳造、土木工事現場など幅広い業界で使われています。
歯科診療の際の歯牙模型製作用として使われています。
カルシウム肥料として使われています。弱酸性~中性のカルシウムのため土壌のpHを上げず、水に溶けやすいため作物に吸われやすい特長があります。
石膏は硫酸カルシウムと水からなる鉱物です。化学組成上では次の3種類に大別されます。
2分子の水を結晶水として保持する硫酸カルシウムです。天然に産出される天然原石と、化学工業で副生成・合成される化学石膏があります。加熱(120℃~150℃)することで、結晶水全体の3/4が脱水し半水石膏となります。
焼石膏とも呼ばれます。水と混練することで水和反応し、二水石膏の針状結晶を析出し凝結します。
結晶水を持たない硫酸カルシウムで、可溶性無水石膏(III型無水石膏)と不溶性無水石膏(II型無水石膏)があります。半水石膏を加熱(180℃~190℃)して得られる可溶性無水石膏は、空気中の水分を吸着して半水石膏に戻ります。一方、不溶性無水石膏は天然に存在しますが、二水石膏を300℃~700℃で焼成することでも得られます。不溶性無水石膏は水を加えても容易に水和反応しませんが、凝結促進剤を加えて硬化させることもできます。
石膏利用の歴史は古く、古代エジプトにまでさかのぼります。古代エジプトのピラミッドに、石の目地材として石膏が用いられています。
また、クフ王のピラミッドの王の石棺には、アラバスター(結晶石膏の一種)が使われ、さらには、クレオパトラがワインを飲むのに使った杯も、天然石膏から削り出されたものといわれています。
古代ギリシャやローマでは、建築材料のほかに、彫塑や型取りなど造形材料にも利用されました。 現代の石膏利用の一例としては、陶磁器型材用としての石膏型があります。この石膏型により高品質な陶磁器の大量生産が可能になっています。
石膏は成形が極めて容易であり、硬化体の面がとても平滑で、さらには吸水性もあることから、陶磁器型材として最適のものといえます。
石膏は人類にとって古くから便利な材料でしたが、はるか時を経た現代では、便利なだけでなく、その造型性能の高さや耐火性などから、産業や生活に欠かせないものとなっています。